無停電装置(UPS)の選び方
このページにたどり着いた人は、無停電装置(UPS)を入れないといけないので、
どうやって選べばよいのかわからないのでググってみたらここが出たということでしょう。
できる限り分かりやすく、例をあげながら、進めていきたい思います。
項目とは以下のとおりです。不要な部分は飛ばしてください。
■なぜUPSが必要なのか?
■事前準備(どんな機器を挿しますか?)
■電力に関する情報を収集する。
■皮相電力(VA)を算出する。
■消費電力(W)を算出する。
■供給方式をどうするか
■UPSを選ぶ
■バッテリー交換・保守
■100Vか200Vか。
■停電になったらどんな動きをさせるか?
■復旧時の動作について
■冗長化
■なぜUPSが必要なのか?
UPSが必要なる場合はいくつか理由があると思います。
UPSがない場合はこのようなリスクがあります。
①いきなりの停電で、コンピュータが壊れた。
災害等で電気の供給がストップすると、コンピュータも一瞬で止まります。
コンピュータにはWindowsなどのOSが入っており、停止させるには正しい手順で止める必要があります。
正しい停止手順を行わないで、いきなり停止させるとハードディスクにダメージを受けます。
ダメージを受けることで、コンピュータが起動できない、もしくは特定のファイルにアクセスできないなどの現象が出ます。
②落雷によって、過電流や瞬断となってコンピュータが壊れる。
雷が落ちると、電柱などを経由してコンセントまで大量の電流が流れ込んできます。
大量の電流が機器に流れると、コンピュータ内部の電子機器がダメージを受けます。
結果的にコンピュータが動かなくなる可能性がでます。
③電力の供給が不安定で、コンピュータが壊れやすい。
日本国内では、このような事象はあまり見られないですが、
工事現場や開発途中の環境であったり、離島などは電力の供給が安定しないところがあります。
電力の供給が不安定になると、極端な話、電気がきたり来なかったりするな状況であるため、
コンピュータが頻繁に落ちるという現象が
■事前準備(何を繋ぐか)
ここからUPSを選ぶための準備になります。
まずUPSに何を挿しますか?ということになります。
必須なのは、停電時にいきなり落ちては困るコンピュータ機器です。
ディスプレイやスイッチなどはいきなり落ちても基本的に問題ありません。
今回はUPSの容量も見積もる必要があるため、いろんな機器を挿してみます。
○サーバー(またはパソコン)
○ディスプレイ
○スイッチ(ハブ)
■電気量を調べる。
UPSに挿す機器の電気量をしらべることで、どのくらいの容量のUPSが必要になってくるのかがわかります。
まずは各機器の型番を調べて、メーカーのホームページにアクセスして、スペック表を探してください。
スペック表に「消費電力」の記載があります。「○○VA」とか「○○W(ワット)」とか書いてあります。
次に「最小」とか「最大」とか書いてありますが、基本的に「最大」の値を見てください。
調べた結果、以下のようなことがわかりました。単位は敢えてバラバラにしてます。
○サーバー 343VA
○ディスプレイ 100V 0.8A
○スイッチ 124W
■皮相電力(VA)を算出する。
皮相電力(ひそうでんりょく)とは何か?についてはここでは説明しません。
VAを算出するために必要とだけにします。
こちらのサイトが参考になると思います。
http://solar-nenkin.com/technology/reactive-power-is-like-foam-of-beer/
○サーバー そのまま343VAです。
○ディスプレイ 100Vx0.8A=80VAになります。
○スイッチ 124Wx0.8(力率)=99.2VAになります。
力率については0.8で計算しています。
皮相電力の合計は343+80+99.2=522.2VAとなります。
■消費電力(W)を算出する。
次に消費電力を算出します。
○サーバー 343VAx0.8(力率)=274.4W
○ディスプレイ 100Vx0.8Ax0.8(力率)=64W
○スイッチ そのまま124Wになります。
力率については0.8で計算しています。
よって消費電力の合計は、274.4+64+124=462.4Wになります。
■余剰分を加味する。
UPSは使い続けると、バッテリーの最大容量が小さくなってきます。
これは普段使っているスマホのバッテリーと同じです。
使えば使うほど、バッテリーで駆動できる時間が短くなります。
UPSは代替2~5年くらい使うので、使い続けていても容量不足にならないようにしましょう。
皮相電力の合計値と、消費電力の合計値にそれぞれ1.3倍ほど盛っておきましょう。
皮相電力 522.2VAx1.3=717.86VA
消費電力 462.4Wx1.3=601.12W
■駆動時間を算出
停電になったので、バッテリー供給に切り替わりました。
コンピュータがそれを感知してシャットダウンを実行しました・・・が、
バッテリーが足りなくなって途中でガツンと落ちました・・・・(T_T)
いくらバッテリー供給に切り替わっても、正常にシャットダウンできるまでの時間は
バッテリー供給できるように計算しておく必要があります。
メーカーでは「バックアップ時間」と書いてある場合があります。
バックアップ時間については、各システムがバッテリーに切り替わったことを検知してから
システムのシャットダウンがすべて完了するまでの時間になります。
また、バッテリーの消耗も考慮して、必要とするバックアップ時間の倍は確保しておくのが望ましい。
バックアップ時間が5分必要なのであれば、10分とします。
■供給方式をどうするか
供給方式としては以下の3つがあります。
①常時インバータ給電方式
②常時商用給電方式
③ラインインタラクティブ方式
詳しくは書きませんが、
①は、電源供給からバッテリーへの切替時も瞬断することがありません。ただし高価。
②は、バッテリー供給への切替時に瞬断は発生しますが、安価です。
瞬断といってもパソコンやサーバーが落ちるほどではありません。
③上記①と②のいいとこ取りです。
価格と性能は①>③>②となります。
②の常時商用給電方式については「正弦波(せいげんは)」と「矩形波(くけいは)」があります。
PCやNASを接続する場合は正弦波がよい。
矩形波には機器が対応してない(サポート外)という場合があるので、できれば矩形波のUPSは避けたい。
詳細についてはこちらが参考になります。
http://www.yutakadenki.jp/products/340_ups_diff.html
■UPSを選ぶ
ここまで来てようやくUPSを選ぶ段階にきました。
これまでの情報をまとめてみましょう。
皮相電力 717.86VA
消費電力 601.12W
バックアップ時間 10分
供給方式 常時商用給電方式で正弦波
以上の情報からメーカーサイトで上記の条件や数値以上の能力をもつUPSを選びます。
~~~ここまでがUPSの選定になります。ここからはUPSに関する補足情報になります。~~~
■バッテリー交換・保守
長く使い続けるとバッテリーが消耗します。大体2年くらいまでかな。
消耗したバッテリーでいざ停電になったときに、システムが正常にシャットダウンするまで
保たないかもしれません。
こういった問題が起こらないように、UPSにはある程度のバッテリー低下が見られたら
警告(アラート)が出るようになっています。これが出たらバッテリー交換のサインです。
バッテリー交換については、UPS購入時の契約内容で有償か無償かに分かれます。
メーカーによって、警告が出る前の「予防交換」というのをサービスでやっているところがあります。
■100Vか200Vか?
みなさんが普段使っているコンセントは100Vです(自宅の壁やオフィスで使っている電源タップなど)
今回の仕様は200Vかも!?という人だけ読んでください。
200Vを使う場合とは、身近なものだとエアコンがあります。
でもエアコンをUPSで使うということはないですね。
200V対応の機器というと、ブレードサーバーやストレージ製品、大型筐体など、
高電力を必要とするものが対象となります。
UPSも200Vに対応した機器を選ぶ必要があります。
200VUPSを使用する場合に注意しないといけないのがコンセントの形状です。
100Vの場合は、コンセントの形状は縦線2本のものになるか、アース付きの3本になります。
200Vになると3本もしくは4本になり、挿す口の形状も多数あるため、
コンセント側の口の形状と、UPS側の口の形状とを併せる必要があります。
■停電になったらどんな動きをさせる?
UPSを入れたのでこれで安泰ですね
「あっ、停電した!!でも大丈夫!!UPSがあるからシステムは落ちませーん。」
・
・
・
(30分後)
システムが落ちちゃいました。
UPSのバッテリーがなくなったので、システムがそのまま落ちました・・・再起不能・・・
UPSを入れたからといって安心してはいけません。
落雷とかの瞬断くらいであれば問題ありませんが、停電など長時間止まる場合などは、
システム側になんらかの処理をさせる必要があります。
バッテリー供給に切り替わったら、手動でシステムをシャットダウンさせるか
自動的にシステムがシャットダウンする方法を2通りです。
日中の仕事中の停電であれば手動でも構いませんが、夜中とか年末年始とか
人が近くにいない時は手動での対応はできません。
そのため、メーカーでは自動的にシステムを停止させる方法をいくつか提供しています。
①UPS本体とシステムをシリアルケーブルで接続する。
シリアルケーブルで接続することで、UPS本体がバッテリー供給に変わったことを
システム側へ通知します。通知を受けてシステム側が設定に従ってシャットダウンします。
シリアルケーブルでの接続は基本的にUPS1台に対して1台のシステムとなります(2台可もある)
②UPS本体とシステムが同じネットワークに繋がっている
UPSとシステムがLANケーブルからスイッチに繋がっている状態にします。
バッテリー供給に切り替わると、UPSからネットワークを経由してシステム側へ通知します。
受信したシステムは設定に従ってシャットダウンします。
このネットワークシャットダウンの構成を組む際には、UPS本体とシステムと間のネットワークが
停電になっている状況でも接続できている必要があります。
ネットワーク機器もUPS等で停電から守るようにしましょう。
最後にUPS本体をどうするかになります。
バッテリー残量がある限り動き続けるようにするのか、時間になったら本体ごと停止させるか。
特に理由がなければ、落としてしまうのがいいでしょう。
停電になってもバッテリーがある限り動かしておきたい場合は前者の対応で構いません。
■停電から復帰時の挙動について
復旧時の動作まで考えることができれば立派なUPSマニアです(笑)
急な停電で電源供給からバッテリー供給に切り替わりました。
システムはバッテリー供給に切り替わったことを検知して自動的にシャットダウンしました。
はい、ここまでは設定通り。
次に停電が回復し、電源供給となりました。
そのときにUPS本体およびシステムの動きをどうするかにします。
特に指示をしない限り、手動で起動させるしかありません。
近くに機器がある場合は手動対応で構いませんが、機器が離れている場合は、
システムが自動的に復帰してくれたほうがいいですよね。
電源が復帰したら、まずUPS本体の電源が入ります。
UPS本体からシステムへの電源供給が可能な状態になったら
システム側がそれを検知して、自動的にシステムが起動。
システムの自動起動についてはBIOSで設定しておく必要があります。
こちらはシステムを購入したメーカーのサイトで確認してください。
■冗長化(二重化)
UPSは1台入れておけば、まぁまぁ電気の供給で障害が発生してもバッテリーが動くので問題ありません。
しかし、UPSも機械ではあるので故障する場合もあります。
それを補うためにUPSをもう一台用意します。
2台のUPSを使いますが、この場合は機器側も電源が2個以上ついているものでないといけません。
サーバーだと電源が2個ついていることがよくあります。
電源1口を1台のUPSのコンセントに挿し、もう一つの電源をもう1台のUPSに指します。
これでどちらかのUPSに問題が発生してもサーバーが止まることはありません。
UPS冗長化の必要性は、対象機器がミッションクリティカル(最重要)な場合であり、
通常は1台で十分です。
最後に
オムロンやAPCではどのUPSを選んだらよいのか、UPS選定ツールというのが提供されていますので、
そちらを参考にしながらやってみるといいでしょう。
また、メーカーに電話やメールで問い合わせることで、こちらから接続する機器の型番や、
電力に関する情報を伝えれば、どのUPSを使えばよいのか教えてくれます。